はじめに 記事をお届けするに当たり、この度の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
斎王 明和町「斎王まつり」にて
斎王と斎宮について(日本遺産)
斎王の始まり
斎王の歴史は日本神話の時代まで遡る。語り継がれる伝説の初代斎王は、天照大神の御杖代であった豊鍬入姫命。そのあとを継ぎ、天照大神の鎮座される場所を探し諸国を旅し、伊勢の地にたどり着いた倭姫命。倭姫命は、伊勢の地(現在の明和町大淀)に入り、佐々夫江行宮を造り、カケチカラ行事の発祥となる伝説をつくった。これが斎王と明和町との縁となったのか、斎王制度が確立し、斎王が天照大神に仕えた場所・斎宮は、伊勢神宮からおよそ15キロメートル離れた伊勢神宮領の入口につくられた。
都から斎宮へ
斎王は飛鳥時代に制度が確立して以降、天皇の即位に伴って、未婚の内親王または女王から占いにより選ばれた。選ばれた斎王は、家族と離れ、慣れ親しんだ都での生活とも別れを告げ、200人余りともいわれる従者に伴われて、斎王群行と呼ばれる5泊6日の旅により、斎宮へ向かう。この旅は斎王にとって神に近づく禊祓の旅である。聖なる神領の入り口に流れる川、祓川で斎王は最後の禊を行い、斎宮に入る。
斎宮跡
祈る斎王
斎宮に住まいを移した斎王が伊勢神宮に赴くのは、9月の神嘗祭、6月、12月の月次祭の年3回のみ。9月の神嘗祭に奉仕するため、8月に身を清めたと言われている尾野湊御禊場跡が大淀の海岸に残っている。それ以外の日々は斎宮で厳重な慎みを保ち、祈りの日々を過ごしながら、神と人との架け橋となっていた。
斎宮での暮らし
斎王の斎宮での暮らしは、祈りを捧げる慎ましやかな生活の一方で、十二単を纏い、貝合わせや盤すごろくを楽しみ、歌を詠むといった都のような雅やかな生活をしていた。斎王の身の回りの世話、庶務などを50人近くの女官が行っていたことは、斎王の地位の高さをしめしている。また、斎宮寮と呼ばれる役所に勤める官人を中心に総勢500人以上の人々が斎宮で執務をしており、天皇の代理である斎王が暮らす斎宮は、都から訪れる人も多く、近隣の国からもさまざまな物資が集まるなど、この地方の文化の中心地の一つだった。
幻の宮
さまざまな史実や逸話・伝説を生みながらおよそ660年間続けられてきた斎王制度も、南北朝の時代以降、国内の兵乱のために廃絶してしまう。古の制度は歴史の中に埋もれ、地名として姿を残すも、斎宮は「幻の宮」となってしまった。幻の宮になりながらも、斎宮に住む人々は、先祖代々語り継がれてきた斎王・斎宮の存在を信じ、斎王の御殿があったとされる場所を「斎王の森」、斎宮の人々に親しまれている竹神社を「野々宮」と呼び、神聖な土地として大切に護り後世に伝え残してきた。
斎宮成立期(飛鳥時代)の斎王宮殿域の特定と高床倉庫群の発見!!
斎宮歴史博物館では、平成30年度、史跡西部において飛鳥・奈良時代の斎宮(初期斎宮)の実態解明を目的とした2回の発掘調査を行ったところ、最初期の斎宮を考えるうえで新しい重要な成果がありました。
そこで、今年度の発掘調査成果の総括と初期斎宮の実態解明に関する意義について、当館の公式見解を提示します。あわせて、「第5回さいくう西脇殿歴史フォーラム」において、一般の皆様に成果を報告します。
1 平成30年度の発掘調査成果の内容
(1)発掘調査の概要
・第193次調査(平成30年6月4日から8月31日まで実施)・調査面積204.5㎡
飛鳥時代の斎宮中枢の区画を構成する掘立柱塀(ほったてばしらべい)【北東コーナー】と、その内部に大型掘立柱建物1棟を確認しました。
・第195次調査(平成30年9月3日から12月28日まで実施)・調査面積330㎡
飛鳥時代の斎宮中枢区画の西側隣接地で、飛鳥時代の大型を含む総柱建物【高床倉庫(たかゆかそうこ)】計15棟を確認しました(倉庫群は複数回の建て替えを含む)。
(2)飛鳥時代の斎宮中枢域の様相
・飛鳥時代には、北から東へ約33度振れた方位で、掘立柱塀による東西約41m(およそ115大 尺※)、南北55m以上の方形区画が存在し、その西側隣接地には、方形区画の方位に合わせた向きの大型の高床倉庫群が整然と建ち並ぶことが判明しました。
※1大尺=35.6㎝
・今回発見された方形区画の北東コーナーとなる塀や、その内部の大型掘立柱建物、西側の高床倉庫 群は、飛鳥時代の都【飛鳥浄御原宮(あすかきよみはらのみや)や難波宮(なにわのみや)など】の宮殿と同様の建築基礎工法を採用して造られています。
・掘立柱塀は1回の建替えがあり、高床倉庫群はその多くが同じ場所で複数回建替えられ、大きくみ て3段階の変遷が想定できます。
2 調査成果報告会
「第5回 さいくう西脇殿歴史フォーラム」
ミニ・シンポジウム
「飛鳥時代の斎宮解明-初期斎宮が見えてきた!?-」について
(1)開催日時 平成31年3月16日(土) 13時30分から16時まで ※受付開始は13時から
(2)会場 「さいくう平安の杜」西脇殿(多気郡明和町斎宮2800番地)
(3)内容
《基調報告》
・「第193次調査の成果」 宮原佑治(斎宮歴史博物館 調査研究課)
・「第195次調査の成果」 川部浩司(斎宮歴史博物館 調査研究課)
・「飛鳥・奈良時代の土器の様相」 大川勝宏(斎宮歴史博物館 調査研究課)
《ディスカッション》
パネリスト 宮原佑治・川部浩司・大川勝宏
司会・進行 山中由紀子(斎宮歴史博物館 調査研究課)
(4)参加方法 事前申込不要・当日会場先着100名
(5)参加費 無料
(6)会場への交通
・電車でお越しの場合
近鉄斎宮駅 史跡公園口下車、右側(伊勢側)にむかって徒歩3分
・車でお越しの場合
伊勢自動車道玉城ICより車で約20分
松阪・伊勢市内より車で約30分
史跡公園「さいくう平安の杜」東側の臨時駐車場、あるいは北側の「いつきのみや地域交流センター」の駐車場をご利用ください。
(7)問い合わせ先
斎宮歴史博物館 調査研究課「さいくう西脇殿歴史フォーラム」係
〒515-0325 三重県多気郡明和町竹川503番地
電話 0596-52-3800(代表) FAX 0596-52-3724
(8)主催 斎宮歴史博物館
(9)協力 明和町、公益財団法人国史跡斎宮跡保存協会
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使
協力(順不同・敬称略)
明和町 斎宮跡・文化観光課 〒515-0332 明和町大字馬之上945番地
電話番号:0596-52-7126
斎宮歴史博物館
〒515-0325 三重県多気郡明和町⽵川503電話︓0596-52-3800(代)
公益社団法人伊勢志摩観光コンベンション機構 〒519-0609 三重県伊勢市二見町茶屋111-1
伊勢市二見生涯学習センター1F 電話番号 0596-44-0800
三重県庁 〒514-8570 三重県津市広明町13番地 電話番号:059-224-3070
文化庁 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話番号(代表) 03(5253)4111
参考
ZIPANG TOKIO 2020
「斎王の都 明和町 ~ 伊勢は斎王で持つ 斎王は伊勢で持つ ~ 尾張名古屋は城で持つ」
ZIPANG TOKIO 2020
「特別編 斎王~明和町より~伝説と歴史が伝える歴代の斎王74名について」
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