ZIPANG-3 TOKIO 2020 縄文早期末・前期(6500~7000年前)「対馬の縄文人は中国に古代文明が生まれる前から、九州と朝鮮半島を小船で往来【寄稿文10】西 護」

はじめに 記事をお届けするに当たり、この度の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。  


対馬「伊奈久比神社」
伊奈は、白鶴が稲穂を落とし、それを耕作適地の志多留に植えたのが稲作の始まり、という起源伝承がある地域です。 伊奈久比神社の祭神は大歳神(穀物神)で、「いなくい」は、「稲」+「食」または「くぐい」(白鳥の古名)などの説があるそうです。
「穂流川」にかかる橋は「鶴鳴橋」。


【日本神話】

スサノオの子である大歳神、ウカノミタマはともに穀物神とされ、前者はお正月に来訪する神として、後者はお稲荷さんとして全国に祭られています。また、同じく食物(穀物)神であるオオゲツヒメ、ウケモチは、スサノオやツクヨミに一度殺され、その死体から穀物が生成した、とされています。これは、発芽→開花→結実→枯死(→発芽)という植物の生成サイクルをそのまま表わしているようです。


【対馬の伝承・異伝】

農耕地が極端に少ない対馬(面積の89%が山地)では、全国的にポピュラーなお稲荷さん(穀物神)が祭られることは少なく(お稲荷さんの神獣である狐が生息しないことも影響しているのかもしれませんが)、ほとんどの集落で漁業・海上交通の神である恵比須・金比羅が祭られています。

例外的に、上県町伊奈に白い鶴が飛来して稲穂を落とし、それを志多留の榎田に植えたのが対馬での米作りの始まりである、という稲作伝来の物語が残されています。

両集落は大陸に近い北西部の海岸沿いに位置し、貝塚や古墳があるなど古くから人が住んでいたことがわかっており、対馬における稲作伝来の最初の地だったのかもしれません。ちなみに、「伊奈」は「稲」が転訛した地名と言われています。


伊奈久比神社 (いなくいじんじゃ)

神社番号 104 式内社

周辺の神社 志多留能理刀神社(105)

アクセス
上県町西部、越高~伊奈間の道路沿いに鳥居があり、階段を登ると社殿があります。


周辺の雰囲気・環境など・神社のプロフィール

対馬北西部の伊奈は、中世から江戸時代にかけて、周辺の16村で構成される伊奈郷の中心地でした。近隣の越高・志多留には縄文時代にさかのぼる遺跡や貝塚があり、朝鮮半島にも近く、対馬最初の稲作伝来地としてもおかしくはありません。白鳥の古名は「鵠(くぐい)」であり、稲鵠(いねくぐい)=伊奈久比(神社)という説もあり、その場合、稲を運んだのは鶴ではなく白鳥ということになります。


追記

上県町(かみあがたまち)の西海岸部について
対馬市上県町(かみあがたまち)
志多留(したる)→伊奈(いな)→越高(こしたか)→御園(みそ)→犬ケ浦(いぬがうら)

【志多留・大将軍山(でじょうぐやま)古墳】
志多留の集落近くの山の斜面にある古墳です。現在は箱式石棺が残されているだけですが、漢鏡と玉などが出土しており、古墳時代の有力者が埋葬されていたと考えられています。

 【賀島恕軒(じょけん)の碑】
伊奈の集落を歩いていると、賀島恕軒(兵介)の草庵跡の石碑を発見。 恕軒は、江戸時代に対馬藩の飛び地であった田代領(佐賀県鳥栖市・基山町)の代官所副代官として善政を敷き、その徳を偲び、現在でも佐賀で「賀島祭」が行われているという人物。


・・・が、対馬に戻って藩政を批判、三代藩主・宗 義真(そうよしざね)の逆鱗に触れ、伊奈に謹慎、そこで生涯を終えました。
いったん取り潰された賀島家ですが、田代領から追慕の声が高く、数十年後に賀島家は再興、名誉回復しました。恕軒の墓所は厳原町久田道の海岸寺にあります。 


余談ですが、田代領では対馬藩を通して朝鮮の薬(奇応丸、千金丹など)の輸入が行われたため売薬・製薬が盛んで、幕末に久光仁平が小松屋を創業、明治になって「奇神丹」を発売、それが日清・日露の軍用薬になり、「サロンパス」(昭和9年発売)で有名な久光製薬に発展していきます。


【越高】

越高には縄文早期末・前期(6500~7000年前)の遺跡があり、九州産の黒曜石と朝鮮半島の土器が同時に出土しています。 中国に古代文明が生まれる前から、対馬の縄文人は九州と朝鮮半島を小船で往来していたのです。

【御園】
御園にはヤマネコトンネルとかわいい神社がありました。

【犬ヶ浦・不思議な岩】
犬ヶ浦には出雲の国造りで活躍する「スクナヒコナ」を祭った「鷦鷯(さざき)神社」がありますが、由緒は不明。 以前から気になっていた道路端の「金山宮」にて。ご神体?(-_-;) 



【寄稿文】 西 護
一般社団法人 対馬観光物産協会 事務局長


参考

ZIPANG-2 TOKIO 2020
~心癒される阿連の風景~ 「 鉱山の神『モロクロガミ(諸黒神)⁉』神話と伝承と豊かな自然に恵まれた、心のふるさと阿連(あれ)【寄稿文その9】 西 護」



協力(敬称略)

一般社団法人 対馬観光物産協会 〒817-0021 長崎県対馬市厳原町今屋敷672番地1
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※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。 

ZIPANG-3 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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