はじめに 記事をお届けするに当たり、先の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
谷地八幡宮「林家舞楽」は日本三大舞楽の中でも、一番古い形をそのまま保っている。
色鮮やかな紅花染めの衣装は、陵王の舞をより一層引き立たせている。
夜の帳が降りる頃になると静けさが戻ってくる「谷地八幡宮」
大正天皇陛下の御大礼記念に建立された「谷地八幡宮」時報堂。晴れの日には、木々の霧氷がキラキラと輝き舞い降りる…
まえがき
宮中舞楽、四天王寺、そしてこの山形県の河北町にある谷地八幡宮で行われる林家舞楽は日本三大舞楽とされており、中でも林家舞楽はこの内一番古い形をそのまま保っていることでも有名です。この町河北町は紅花大尽と呼ばれる旧家が沢山あり、奥ゆかしいお雛見という恒例行事が行われる事でも有名な場所です。
山形と言う処は全国的に見れば、何故かド田舎で地味で素朴だよね〜…と思われる方が多いかも知れませんね?
でも、蔵王温泉やあのトニー・ザイラーが滑った蔵王スキー場、山寺、奥の細道の芭蕉紀行と言えば…? あぁ〜蔵王のスキー場ならば、知ってるよ!昔、上野駅から夜行列車で、盛んに通ったもんだ。でも、あれは宮城県だよね〜なんて、答えが返ってきます。……違います。山形県です‼
では、さくらんぼのご本家は?また、ラ、フランスの本場は? も、一つ酒の十四代は?って問えば……それってもしかすると山形?と寝ぼけた答えに…傷ついちゃいますね〜
序に天童市は何が有名でしようか? ハテ?…(ダンマリ続く)・・・将棋の日本一を決める聖地ですよ〜
さて、此処でご紹介する河北町はこの天童市に隣接する町で、江戸時代には谷地と呼ばれ、大地は水に恵まれた肥沃な農地であり、曾て "紅一匁金一匁" と呼ばれた日本一の紅花の栽培地でした。
最上紅花の栽培面積
紅花生産高の変化
*文化8年(1811)168t・・・時価17億1千万位(昭和50年 1両/2万6千円とする)
全国の紅花生産(享保16年)
1:出羽最上 2:奥州仙台 3:奥州福島
川港としても日本海に通じる最上川流域にあり、都や日本海に沿う各港との北前船による交易が盛んとなり、多くの近江商人が出入りして紅花大尽と呼ばれる豪商を輩出したのです。今でもその末裔である旧家では、奥ゆかしい "お雛見" という恒例行事の発祥地でもあります。
ただ、当地は日本一の栽培地であっても、昔からそれに携わっても農民や一般庶民の染色行為は一切、禁じられていましたから彼らは紅花がどんな色に染まるかは知る由もありませんでした。
特に紅花の儲けで、多くの都文化を運んだ紅花豪商たちは、帰り荷として贅沢に使われた紅花染めの衣裳で着飾ったお雛様を運び込み、土地の民衆に披露したのです。それは想像することさえもできないお内裏様を模したお人形達でした。
正野玄三家の御殿飾り/正野家(所蔵)
河北町谷地の "お雛見"については、後日、当編集局にお任せしてここでは、近江商人の故郷(湖東商人、八幡商人、高島商人、日野商人)のうち日野のおひなまつりをご紹介します。
桟敷窓越しに飾る日野のおひなさま(お客様や道行く人々への感謝と歓迎のご挨拶)
2月上旬~3月上旬、日野町の大窪から村井・西大路にかけての商店街や商人屋敷など、どこか懐かしさを感じる日野の町並み。そんな街角や商家・個人宅に、さらに日野独特の風景である桟敷窓越しなどに、江戸時代から現代に至るまでのお雛様や創作人形が150ヶ所以上に飾られます。
桟敷窓と雛壇の間の中庭の様子、茶を点ててお客様をお迎えする。
また、河北町ではお祭り行事にも力を入れました。中でも最も歴史の古いのが谷地八幡宮の舞楽でありましょう。舞楽と言えば…皆様ご存知のお正月には必ずTV等で聴こえてくるあの、雅びた越天楽の雅樂ですが…雅楽と共に日本の伝統芸能である三大舞楽と言えば、先ず宮中舞楽、四天王寺舞楽、そしてこの山形県の河北町にある谷地八幡宮で行われる林家舞楽とされています。中でも林家舞楽は、一番古い形をそのまま保っているのだそうです。勿論、何れも国指定重要無形文化財です。
東北芸術工科大学 名誉教授
風土・色彩文化研究所 主宰 日原もとこ(覚書より)
谷地八幡宮 由緒
神社の成り立ち
沿革
「人皇七十二代堀河院の寛治五年、源義家の清原武衡・家衡誅討の時、宮を白鳥村(村山市白鳥)へ遷す。其の後世上静謐となって今の宮地に瑞垣を構えて鎮座し奉る」と伝えられています。
天正初年頃、白鳥十郎長久公が谷地城築城の折、白鳥村より現在地に遷宮し奉祀致しました。その間、円福寺を別当職として寺坊多数で奉仕されました。
「御門主御末寺の御令旨」をもって御室直末寺とし、幡谷山円福寺と称して明治初年まで真言宗をもって奉仕されました。
明治六年郷社、同四十年には神饌幣帛料供進神社に指定されました。昭和十五年県社に昇格。昭和三十四年別表神社に昇格し、社名を創建当時の「谷地八幡宮」と改称。
平成三十年、日本遺産「山寺が支えた紅花文化」の構成文化財として認定を受けています。
御祭神
応神天皇
応神天皇は、第十四代仲哀天皇と神功皇后の第四皇子で、誉田別尊であります。ご在中、海人部、山部を定められたほか、韓や漢の人々の来朝や帰化するものが多く、外来人との交流を深められ、技芸や文学の興隆に尽くされました。
貞観元年(八五九)宇佐神宮より山城国石清水に勧請され、石清水八幡宮を祀られました。古代日本発展の神として国家国民の信仰を受けてまいりました。
配祀神
市寸島比賣命
明治はじめに八幡宮の境外地(南小路)にあった旧号『弁財天堂』(旧社地東十七間一尺南北十四間三尺)を合祀いたしました。
歴史
慶応
慶応二年四月‥‥‥長延寺出火(谷地中心部大火となり、当宮ほか別当寺堂烏有に帰す。)
明治
明治六年八月‥‥‥神仏分離令発布により郷社八幡神社に列格
明治四十年四月‥‥郷社、明治四十年には神饌幣帛料供進神社
大正
大正三年‥‥‥‥‥時報堂建立 和田啓治寄進
昭和
昭和十五年九月‥‥県社に昇格
昭和二十一年九月‥氏子会を結成
昭和二十七年五月‥舞楽を高松宮宣仁親王殿下より御覧を賜る(慈恩寺にて)
昭和三十四年八月‥別表神社に加列。社名を谷地八幡宮とする
昭和三十五年‥‥‥昭和天皇香淳皇后より舞楽の天覧を賜る
昭和五十年八月‥‥ご社殿復興百年記念に石舞台復元、収蔵庫、渡廊下新築
昭和五十一年九月‥人間国宝月山貞一師鍛冶月山顕彰碑除幕式
月山一門により東北初の神前打ち、三年後大太刀の奉納
昭和六十三年五月‥舞楽を秩父宮勢津子妃殿下より御覧を賜る
昭和六十三年九月‥皇太子・皇太子妃両殿下(今上両陛下)本宮に行啓を賜り「舞楽」の御覧を賜る
平成
平成三十年‥‥‥‥日本遺産「山寺が支えた紅花文化」の構成文化財として認定を受ける。
境内社
八坂神社 天満宮 竈戸神社 雷神社 金山神社 稲荷神社
社宝
短刀(銘月山)大太刀一振
人間国宝月山貞一師奉納
祭礼絵巻三巻
施設
舞楽石舞台・楽舎
時報塔(時報堂)石碑
舞楽天覧の碑
鍛冶月山顕彰之碑
国指定重要無形民俗文化財
林家舞楽
概説
貞観二年(860)に、僧円仁(後の慈覚大師)が羽州山寺立石寺を開山しました。この時、大阪市四天王寺の楽人林越前守政照が円仁に従って東国に下り、四天王寺の舞楽を山寺に伝えたと古記録に記されています。
その後、林政照の子孫は山寺で例年舞楽を奉仕したが、室町時代に慈恩寺(寒河江市)に、さらに江戸時代初期に谷地に移り住み、山寺・慈恩寺・谷地八幡宮の舞楽を司り現在に至ります。
この千百五十有余年の間、門外不出、一子相伝の家憲を固く守り、次々に長子に秘法を伝承しているのでした。
林家舞楽は早くに地方に下ったため、平安中期以降の楽制改革(日本化)の影響が少なく、よりシルクロードの面影をとどめていると評されています。
嘉暦四年(1329)に描かれた林家秘蔵の舞楽図譜(県有形文化財)には、二十九曲描かれており、現在は十一曲を伝承し、山寺立石寺の臨時法会、慈恩寺は五月五日の一切経会、谷地八幡宮は九月の例大祭にて奉奏しています。
舞楽奉奏
谷地八幡宮例大祭『谷地どんがまつり』
九月敬老の日を含む3連休(土・日・月)
一日目と二日目に境内石舞台にて舞楽を奉奏します。
《一日目》14時45分:燕歩、三台、散手、還城楽、抜頭、陵王、納曽利
《一日目》19時45分:1〜2曲
《二日目》14時30分:燕歩、三台、散手、太平楽、安摩、二の舞、還城楽、抜頭、陵王、納曽利
石舞台
慈恩寺『一切経会』
五月五日(こどもの日)
本堂前に設けられた舞台にて舞楽(8曲)を奉納します。
14:30 〜:燕歩、三台、散手、太平楽、安摩、二の舞、陵王、納曽利
文化財指定
昭和二十六年九月、谷地の舞楽保存会が結成され、地方唯一の伝統芸能の保存につとめ、昭和五十六年一月に「国の重要無形民俗文化財」に指定されています。
平成三十年六月には日本遺産「山寺が支えた紅花文化」の構成文化財として、谷地八幡宮と共に指定を受けています。
ご皇室の御覧
昭和二十七年五月、高松宮殿下。
昭和三十五年五月十日、天皇・皇后両陛下の全国植樹祭行幸啓に際し、天覧を賜っています。
昭和六十三年九月十九日には、皇太子・同妃両殿下(現:今上天皇陛下、皇后陛下)谷地八幡宮へ行啓遊ばされ、内拝殿にてご覧賜っています。
続く・・・
鎹八咫烏記 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
協力(順不同・敬称略)
谷地八幡宮 〒999-3511 山形県西村山郡河北町谷地224電話: 0237-72-2149
河北町役場 〒999-3511 山形県西村山郡河北町谷地戊81電話: 0237-73-2111
公益社団法人 山形県観光物産協会
〒990-0827 山形県山形市城南町1丁目1−1霞城セントラル
電話: 023-647-2333
日野観光協会〒529-1604 滋賀県蒲生郡日野町村井1284番地(日野まちかど感応館内)
TEL:0748-52-6577
一般社団法人 河北町観光協会
〒999-3511 山形県西村山郡河北町谷地己885−1電話: 0237-72-3787
日原もとこ 東北芸術工科大学 名誉教授 風土・色彩文化研究所 主宰 まんだら塾 塾長
文化庁 〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話番号(代表)03(5253)4111
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
0コメント