はじめに 記事をお届けするに当たり、先の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
「はやぶさ2」と「Ryugu」(リュウグウ)
小惑星探査機「はやぶさ2」(Hayabusa2)は、数々の新しい技術に挑戦し2010年6月に地球への帰還を果たした小惑星探査機「はやぶさ」(MUSES-C)の後継機です。
「はやぶさ」では、イオンエンジンによる新しい航行方法を確立しながら、太陽系の起源の解明に繋がる手がかりを得ることを目的に、小惑星イトカワのサンプルを持ち帰りました。今回「はやぶさ2」では「はやぶさ」(MUSES-C)※で培った経験を活かしながら、太陽系の起源・進化と生命の原材料物質を解明するため、C型小惑星「Ryugu」(リュウグウ)を目指します。
太陽系の起源や進化を知るためには、代表的なタイプであるS型、C型、D型の小惑星を調査する必要があります。
※2003年5月9日13時29分25秒に宇宙科学研究所が打ち上げた小惑星探査機 着陸地点小惑星「イトカワ」のことを指し、同機は2010年6月に地球へと帰還しました。
「はやぶさ2」が目指すC型小惑星はS型小惑星のイトカワと比べるとより始原的な天体で、同じ岩石質の小惑星でありながら有機物や含水鉱物をより多く含んでいると考えられています。
地球をつくる鉱物、海の水、生命の原材料物質は、太陽系初期には原始太陽系星雲の中で密接な関係を持っていたと考えられており、始原的な天体であるC型小惑星から採取したサンプルを分析し、太陽系空間にあった有機物や水がどのようなものであったのか、またどのように相互作用し共存してきたかを探ることで、生命の起源にも迫ることができると期待されています。
地球からリュウグウは2億8千万kmかなたの宇宙空間にあります。「はやぶさ2」は、打ち上げから約32億kmを飛行しリュウグウに到着しました。
リュウグウ:東京大、神戸大、千葉工大、産業医科大、高知大、愛知東邦大、会津大、東京理科大
はやぶさ2:JAXA、東京大
小惑星探査機「はやぶさ2」衝突装置の作動の確認について
ミッションの意義
「はやぶさ2」のミッションの意義は、「科学的意義」、「技術的意義」そして「探査としての意義」の3つあります。
■科学的意義
「我々はどこから来たのか」という根源的な疑問を解決するために、太陽系の起源や進化、生命の原材料を調べます。地球本体、海水、生命を作った原材料物質は、惑星が生まれる前の原始太陽系星雲の中に存在していましたが、太陽系初期には同じ母天体の中で、互いに密接な関係を持っていたと考えられます。この相互作用を現在でも保っている始原天体(C型小惑星)を探査しそのサンプルを分析することで、太陽系の起源・進化の解明や生命の原材料物質を解明します。
■技術的意義
「技術で世界をリードする」ために、日本独自の深宇宙探査技術の継承と発展を目指します。小惑星探査機「はやぶさ」は世界初の小惑星サンプルリターンとして、数々の新しい技術に挑戦したミッションでした。その経験を継承し、より確実に深宇宙探査を行える技術を確立します。さらに、新たな技術にも挑戦し、今後の新たな可能性を開きます。
■探査としての意義
「フロンティアへの挑戦」を行うことで、科学技術のイノベーションや産業・社会への波及、国際的なプレゼンスの発揮、青少年育成等の効果が期待されます。未踏の地に踏み込むことで、新しい科学技術を創造し産業に貢献するとともに、天体の地球衝突問題(スペースガード)、宇宙資源利用、有人探査のターゲット等の科学以外の観点からも小天体に対応することで社会に貢献することを目指します。
具体的な目標
ミッションの具体的な目標は、次のようになります。
理学目標1:
太陽系における物質進化過程の謎解きC型小惑星の物質科学的特性を調べる。特に鉱物-水-有機物の相互作用を明らかにする。
理学目標2:
微惑星の物理進化過程の謎解き小惑星の再集積過程・内部構造・地下物質の直接探査により、小惑星の形成過程を調べる。
工学目標1:
深宇宙サンプルリターン探査技術の確立「はやぶさ」で試みた新しい技術について、ロバスト性、確実性、運用性を向上させ、技術として成熟させる。
工学目標2:
宇宙衝突探査技術の実証衝突体を天体に衝突させる実証を行う。
2019年(平成31年4月5日10時56分)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載した衝突装置(SCI:Small Carry-on Impactor)を小惑星Ryugu(リュウグウ)へ向けて分離する運用を実施しました。
「はやぶさ2」の広角の光学航法カメラ(ONC-W1)により、SCIの分離が行われた様子を捉えたことから、SCIの分離が計画通り実施されたと判断しています。
「はやぶさ2」は衝突装置運用による影響を回避するため、SCI作動前に小惑星後方の安全地帯に退避しました。現在、探査機の状態は正常です。
SCI作動の有無や、リュウグウにクレーターができたかどうかの確認結果は、改めてお知らせします。
「はやぶさ2」搭載の広角の光学航法カメラ(ONC-W1)で撮影した、分離後の衝突装置(SCI)の様子。
撮影時刻:2019年4月5日10時56分(探査機上の時刻・日本時間)
撮影高度:小惑星リュウグウ表面から約500m
画像:JAXA、東京大、高知大、立教大、名古屋大、千葉工大、明治大、会津大、産総研
2019年(平成31年4月5日11時36分)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星探査機「はやぶさ2」に搭載した衝突装置(SCI:Small Carry-on Impactor)を小惑星Ryugu(リュウグウ)へ向けて分離し、作動させる運用を実施しました。
「はやぶさ2」より分離したカメラ(DCAM3)が、SCIの作動時間に撮影した写真に、リュウグウ表面からの噴出物の様子が捉えられていたことから、SCIが計画通り作動したと判断しています。
「はやぶさ2」の状態は正常です。リュウグウにクレーターができたかどうかの確認結果は、改めてお知らせします。
「はやぶさ2」から分離されたDCAM3が捉えた画像。
SCIが作動してリュウグウに衝突し、リュウグウ表面からの噴出物の様子が確認できます。
世界初の快挙。人工物を小惑星に衝突させ小惑星リュウグウの地下に存在する岩石を調査するための試みに成功した模様です。
撮影時刻:2019年4月5日11時36分(分離カメラ上の時刻・日本時間)
画像:JAXA、神戸大、千葉工大、産業医科大、高知大、愛知東邦大、会津大、東京理科大
打ち上げからの経過時間 +1584d 11:56:24
打ち上げからの総飛行距離 3832793.96×103 km
地球-探査機の距離 313604.25×103 km
探査機の対太陽速度 23.90km/s
電波の往復時間 2091秒
この広い宇宙空間のどこかに地球と同じような星が存在して将来、人類、動・植物等が地球を離れなければならない事態(そういうことにならない事を祈ります)が、もし発生した時のための第一歩として、地球人の夢を乗せて打ち上げられた「はやぶさ2」がリュウグウでの任務を完了して、玉手箱を手に無事地球へ帰還することを祈願いたしましょう。
我々の子孫のために・・・
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使
協力(敬称略)
はやぶさ2プロジェクト
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