はじめに 記事をお届けするに当たり、先の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
『魏志倭人伝』一支国の王都
原の辻遺跡
紀元前2~3世紀から紀元3~4世紀にかけて形成された大規模な多重環濠集落で、芦辺町と石田町にまたがる台地上を中心に、東西、南北ともに約1km四方に広がっています。平成7年、原の辻遺跡※¹は『魏志倭人伝』の中の「一支国」※²の王都と特定されています。
※1原の辻遺跡(はるのつじいせき)とされる※2「一支国」とは、長崎県壱岐市芦辺町深江栄触・深江鶴亀触、石田町石田西触にある遺跡。
発掘調査途中のため、古代史を書き換えるような発見が相次いでいて、最近では人面石が話題になりました。ムンクの絵のようなユニークなもので、3~4世紀に作られたもの。また棹秤(さおばかり)に用いる錘(おもり)らしきものも出土し、事実だとすると7世紀とされていた度量衡整備が、さらに400年以上もさかのぼることになります。平成12年に弥生時代のものとしては国内3カ所目の国特別史跡に指定。
原の辻一支国王都復元公園は、一支国の王都を再現したもの。また隣接の「原の辻ガイダンス」では、勾玉づくりなどの体験ができます。
★「原の辻遺跡」及び「原の辻遺跡出土品」は、日本遺産『国境の島 壱岐・対馬・五島~古代からの架け橋~』の構成要素として認定されています。
箱根旧街道(一里塚) 国史跡
街道筋に旅人の旅程の目印となるように、土を盛って小山を築き、その上に樹木を植えた道標。およそ一里(約4km)毎に作られた。
雨の日には脛(すね)までつかる悪路と言われた東海道に、延宝八年(1680)に石を敷き詰め石畳の道にした。峠道の石畳の規模は当時の日本で随一。
★箱根旧街道(一里塚)は、日本遺産「旅人たちの足跡残る悠 久の石畳道 ―箱根八里で辿る遥かな江戸の旅路」の構成要素として認定されています。
三内丸山遺跡センター(特別史跡三内丸山遺跡)とは
三内丸山遺跡では、平成6年に保存・活用が決定されてから、発掘調査や研究を継続するとともに、遺跡の公開・活用に努めてきました。
「三内丸山遺跡センター」は、平成31年度に県総合運動公園の遺跡区域と、埋蔵文化財センター縄文時遊館とで構成する教育機関として設置されました。
三内丸山遺跡センターでは、特別史跡三内丸山遺跡が、我が国を代表する縄文遺跡として、これまで以上に国内外から多くの人々が遺跡を訪れ、縄文の「むら」のたたずまいの中で、縄文文化を知り、体感し、親しむことができるよう、遺跡に関する調査・研究、保存、展示、教育普及などの活動の充実に努めています。
縄文時代における集落の全体像や生活、自然環境等とその変遷を具体的に解明することができる、日本を代表する縄文遺跡として評価され、特別史跡に指定された三内丸山遺跡を、次世代へ着実に継承するため、遺跡を適切に保存します。
質・量ともに豊富な三内丸山遺跡出土品は、縄文人の生活を理解するうえで貴重な資料であり、適切な環境の下で保存します。
以上、3箇所の遺跡はこの度の文化庁が計画している文化財保存活用地域計画の事例として、挙げております。
「文化財保存活用地域計画」とは
・「文化財保存活用地域計画」は,各市町村において取り組んでいく目標や取組の具体的な内容を記載した,当該市町村における文化財の保存・活用に関する基本的なアクション・プランです。
・「文化財保存活用地域計画」において,文化財の保存・活用に関して当該市町村が目指す将来的なビジョンや具体的な事業等の実施計画を定め,これに従って計画的に取組を進めることで,継続性・一貫性のある文化財の保存・活用が一層促進されます。また,当該市町村における文化財行政の取組の方向性を計画として対外的に明示するとともに,作成した「文化財保存活用地域計画」を広く周知し,民間団体等の様々な関係者のみならず地域住民の理解・協力を得ることにより,地域社会総がかりによる,より充実した文化財の保存・活用を図っていくことが可能となります。
作成について
・文化庁では,地方公共団体が「文化財保存活用地域計画」を作成する際の基本的な考え方や留意事項などを指針として取りまとめていますのでご案内いたします。
文化財保護法に基づく文化財保存活用大綱・文化財保存活用地域計画・
保存活用計画の策定等に関する指針【概要】
指針の位置付け
平成30年の文化財保護法(以下「法」という。)の改正により、新たに制度化された
(1)都道府県による文化財保存活用大綱の策定、
(2)市町村による文化財保存活用地域計画の作成及び文化庁長官による認定、
(3)市町村による文化財保存活用支援団体の指定、
(4)所有者等
による保存活用計画の作成及び文化庁長官による認定等に関して、その作成・推進等が円滑に進むよう、作成等に当たっての基本的な考え方や具体的な記載事項、留意事項等を示したもの。
指針の主な内容
1.文化財保存活用大綱
○大綱は、各都道府県における文化財の保存・活用の基本的な方向性を明確化し、当該都道府県内において各種の取組を進めていく上で共通の基盤となるもの。
○大綱には、以下に掲げる内容を基本的な記載事項として定める。
①文化財の保存・活用に関する基本的な方針、
②文化財の保存・活用を図るために講ずる措置
③域内の市町村への支援の方針、
④防災・災害発生時の対応、
⑤文化財の保存・活用の推進体制
○策定の際は、文化財の専門家や所有者、民間団体関係者、市町村の文化財担当者等の意見を聴くとともに、関係部局と情報共有を図るなど適切に連携することが望ましい。
2.文化財保存活用地域計画
○地域計画は、各市町村が目指す目標や中長期的に取り組む具体的な内容を記載した、当該市町村における文化財の保存・活用に関する基本的なアクション・プラン。
○地域計画には、以下に掲げる内容を記載事項として定める(法第183条の3第2項各号)。
(第1号関係)[当該市町村の区域における文化財の保存及び活用に関する基本的な方針]
①当該市町村の概要、
②当該市町村の文化財の概要、
③当該市町村の歴史文化の特徴、
④文化財の保存・活用に関する課題、
⑤文化財の保存・活用に関する方針
(第2号関係)
[⑥当該市町村の区域における文化財の保存及び活用を図るために講ずる措置の内容]
(第3号関係)
[⑦当該市町村の区域における文化財を把握するための調査に関する事項]
(第4号関係)
[⑧計画期間]
(第5号関係)
[文部科学省令で定める事項] ⑨文化財の保存・活用の推進体制等
(その他、必要に応じて任意で定めることができる事項)
⑩関連文化財群に関する事項、
⑪文化財保存活用区域に関する事項、
⑫認定を受けた場合の事務処理特例の適用を希望する事務の内容、
⑬その他の事項
○作成の際は、協議会を設置して多様な関係者の意見を踏まえることが望ましい。協議会には、都道府県、市町村の都市計画・教育・観光等の関係部局のほか、文化財の保存会やNPO団体、自治会、大学・高専教員、学芸員等の必要な者が参画できる。また、地方文化財保護審議会の意見聴取を行うほか、パブリックコメント等により住民意見の反映に努めることが必要。
○文化庁長官の認定を受けるには、以下の基準を満たすことが必要(法第183条の3第5項各号)。
(第1号関係)
[当該地域計画の実施が文化財の保存及び活用に寄与するものであると認められること]
・計画期間内に実施すべき措置が盛り込まれていること
・それらが文化財の保存・活用に寄与するものであることが合理的に説明されていること
(第2号関係)
[円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること]
・措置の実施主体が特定されているか、特定される見込みが高いこと
・措置の実施スケジュールが明確であること
・認定を受けた場合の事務処理の特例の適用を希望する場合には、当該事務の実施に必要な
人員の配置など適切な実施体制が確保されていること
(第3号関係)
[大綱が定められているときは、当該大綱に照らして適切なものであること]
3.文化財保存活用支援団体
○支援団体は、市町村が地域の民間団体と連携・協力していくパートナーシップを結ぶことにより、地域の多様な主体を文化財に関する各種施策の推進主体として位置付けたもの。
○支援団体には、文化財の保存・活用に取り組む社団法人、財団法人、NPO法人、営利団体(民間企業等)、法人格を持たない任意の団体などが指定されることが考えられる。
○指定の際は、定款や事業計画書、財務諸表等により、団体の組織・資金等の面を確認することが必要。また、市町村と支援団体は適正な役割分担のもとに円滑に連携するため、定期的に意見交換の場を設けるなど、認識の共有を図りながら取組を進めることが望ましい。
○個人・法人が重要文化財や重要文化財・史跡名勝天然記念物として指定された土地を一定の支援団体に譲渡する場合、譲渡所得の課税の特例等を受けることができる。
4.保存活用計画
○保存活用計画は、個々の国指定文化財及び登録文化財を対象に、所有者・管理団体等が作成する保存・活用の考え方や具体的な取組の内容を定めた基本的な計画である。
○保存活用計画には、文化財類型に応じた記載事項を定める。
【重要文化財(建造物)の場合】
(当該重要文化財に関する基本的な事項)
①当該重要文化財の名称・所在地等、
②当該重要文化財の所有者・管理団体等、
③保存活用計画の対象とする区域、
④当該重要文化財の概要・価値等
(当該重要文化財の保存及び活用のために行う具体的な措置の内容)
⑤保存の現状と課題、
⑥活用の現状と課題、
⑦保存管理に関する事項、
⑧環境保全に関する事項、
⑨防災・防犯に関する事項、
⑩活用に関する事項、
⑪保護に関する諸手続
(計画期間)
⑫計画期間
(必要に応じて任意で記載する事項)
⑬現状変更又は保存に影響を及ぼす行為(以下「現状変更等」という。)に関する事項、
⑭修理に関する事項
○作成の際は、地方公共団体の文化財担当部局や文化財の専門家等の指導・助言を求めたり、意見を聴きながら作成することが考えられる。
○文化庁長官の認定を受けるには、以下の基準を満たすことが必要。
(保存活用計画の実施が文化財の保存及び活用に寄与するものであると認められること)【全類型共通】
・文化財の状況に応じて、計画期間内において実施すべき措置が盛り込まれていること
・それらが文化財の保存・活用に寄与するものであることが合理的に説明されていること
(円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること)【全類型共通】
・措置の実施主体が特定されているか、特定される見込みが高いこと
・措置の実施スケジュールが明確であること
(大綱又は認定地域計画が定められているときは、これらに照らして適切なものであること)【全類型共通】
・保存活用計画の内容が大綱又は認定地域計画と整合性のとれたものとなっていること
(現状変更等に関する事項が記載されている場合には、その内容が省令で定める基準に適合するものであること)【重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡名勝天然記念物、登録有形文化財、登録有形民俗文化財、登録記念物】
・現状変更等の実施方法等が明らかであることや、文化財が毀損するおそれがないことなど
(修理に関する事項が記載されている場合には、その内容が省令で定める基準に適合するものであること)【重要文化財】
・修理の実施方法等が明らかであることや、文化財が毀損するおそれがないことなど
(公開を目的とする寄託契約に関する事項が記載されている場合には、その内容が省令で定める基準に適合するものであること)【重要文化財(美術工芸品)、登録有形文化財(美術工芸品)】
・当該寄託契約に、寄託先美術館・博物館で当該美術工芸品を適切に公開する旨の定めがあることや、5年以上の期間にわたって有効な契約であることなど
ここでは、文化財保護法に基づく文化財保存活用大綱・文化財保存活用地域計画・保存活用計画の策定等に関する指針【概要】について記載いたしました。
指針本文は全56ページありますので、資料をご覧になられたい地方公共団体並びに研究者、文化財保存活用にご興味のおありの方、どなたでも下記にお問い合わせください。
まだまだ市町村には、未公開の日本にとって大変に大切なお宝が眠っている可能性があります。是非、お問い合わせください。
「文化財保存活用地域計画」に関する支援方策
・文化庁地域文化創生本部に相談窓口を設置しています。「文化財保存活用地域計画」の作成方法や内容,指針の詳細説明等,不明な点があれば随時相談いただけます。
【「文化財保存活用地域計画」相談窓口】
文化庁地域文化創生本部
広域文化観光・まちづくりグループ
電話:075-330-6737 E-mail:bunkakanko@mext.go.jp
参考
タイムスケジュール例
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使
協力(順不同・敬称略)
文化庁〒100-8959 東京都千代田区霞が関3丁目2番2号 電話(代表)03(5253)4111
文部科学省 〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号 電話 03-5253-4111(代表)
一般社団法人 壱岐市観光連盟〒811-5133長崎県壱岐市郷ノ浦町本村触620-1
TEL.0920-47-3700
三内丸山遺跡センター 〒038-0031 青森県青森市三内字丸山305 TEL.017-766-8282
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
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