はじめに記事をお届けするに当たり、このたび関東地域を直撃した、強烈な台風15 号による被害は特に炎天下、長期間の停電復旧の遅れで、亡くなられた方々を始め、多岐に亘って被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。
日本初の公式プロモーション【Salone del Mobile. Milano ISETAN SHINJUKU】を開催
会場は伊勢丹新宿店本館5階
ミラノサローネ国際家具見本市2019会場(ミラノにて)
世界中から最新のデザインが集まるミラノ・デザインウィーク。
株式会社 三越伊勢丹ホールディングスは、その中核をなす「ミラノサローネ国際家具見本市(以下ミラノサローネ)」との協業による日本初の公式プロモーション【Salone del Mobile. Milano ISETAN SHINJUKU】を開催します。
■会期:2019年9月18日(水)~30日(月)
■場所:伊勢丹新宿店本館5階=リビングルーム/プロモーション
9月18日(水)~30日(火)の会期中は、ミラノサローネによるアートインスタレーションをはじめ、今回のプロモーションのためのオリジナルムービーの展示を予定しています。
また、会期中のショーウィンドウは、イタリアンデザインマスターズをテーマにインスタレーションを展開します。
参考
Salone del Mobile.Milano
マニフェスト
ミラノの街に根ざした Salone del Mobile.Milano /ミラノサローネ国際家具見本市(以 下、ミラノサローネ)は、ミラノ市との相互関係をより強化し、更なる国際化を目指し、このデザインの街にいくつかのデザイン・プロジェクトを近い将来実現させ ます。
2018年に誕生したミラノサローネ・マニフェスト。
これはミラノの街へ捧げる敬愛であり、考えやプロジェクト、新しいリソースを引き寄せ、イベントとミラノの街の
リーダーシップを維持するために協業できる力を伝えることを目的としています。そ
して2019年は新たなテーマ、「インジェヌイティ (創意工夫)」が加わりました。
次回ミラノサローネは、2020年4月21日から26日まで開催予定です。
なぜ、ミラノサローネは、他の見本市と違うのか。
【感動】
ミラノサローネは、つながり、創造性、革新のシステムです。
一週間に、起業家、
ジャーナリスト、知識人、批評家、デザイナー、建築家、クリエイター、ナレッジ
ワーカー、美の愛好家など、ミラノに30万人以上の人々が集まり、毎年この一週間に再会します。ミラノサローネは「イモーション」の場、感動と興奮の場です。この世界が注目するイベントへの投資することで、建築家やデザイナーがサローネ準備に没頭できることを誇りとしています。
プロジェクトは準備段階から感動があり、イベント主催者も、最高のステージを提供するために企業と一丸となって1年間フル回転しています。そのため、このイベントはもはや単なる見本市に留まらず、業界関係者はもとより、デザインに無関係な人々まで多くを魅了する唯一無二のイベントと化しています。今や誰もが一度は来たいと思うミラノサローネ。
企業、クリエイ
ター、トレンドハンターなどが、デザインや革新、生産、受注、それぞれに関わる人とのコンタクトを求めて訪れます。この現象が、ミラノサローネを通してデザイン
-製品-品質-革新-都市-価値-の素晴らしい繋りを作り出し、このプロセスによって、新しいマニフェストの意図が構成されています。
【企業】
2019年、日本からはカリモク家具(株)が、本会場と市内のギャラリーの2つの会場へ出展し、1つのコラボレーションイベントを行いました。
世界で活躍するデザイナーとの協働のもと、カリモクニュースタンダードという新しいブランドを2009年に立ち上げ、現在は海外にもその活動の場を広げ、この10年の間に少しずつ、新たなアイデアや技術、蓄積してきたノウハウを生かし、さまざまなアイテムが加わり奥行きをもったブランドへと成長してきています。
ミラノサローネは、クラシックからデザインまで、2,000社以上(内30%は海外出展社)の企業が家具を発表する場。劇場のように見える煌びやかなスタンドの背後には、ブリンツァをはじめとするミラノ近郊から、ベネト、マルケ、トスカーナ、プー リア、更にはドイツ、フランス、ベルギー、アメリカ等、数多くの生産ネットワークが存在します。
世界中の素晴らしい生産者から厳選された海外出展社もひしめき合う華やかな見本市の舞台には、生産ネットワークやシステムを地道に作り確固たる基盤を作り上げてきた、職人を抱える小さな、小さな企業も存在します。
ミラノサローネの成功は、その基盤となる生産システム − 12ヶ月ごとの革新的なプロセスと生産を可能にしてくれるシステム - によって成り立っています。ミラノサローネに出展する企業、またミラノサローネ自体の絶えず革新する能力に基づいています。歴史を守りながら、競争が激しいマーケットで常に前進し続けるには「革新」と「品質」だけが生き残れるキーワードです。ミラノサローネ自身も革新する必要があります。常に出展社と顧客サービスのモデルとなるよう、向上していく必要があります。
【品質】
今日、品質はサステイナブル=持続可能でなければなりません。
これは、設計から
開発、経済計画からマーケティングおよびコミュニケション・プロセス、アフター
サービスまで、生産プロセスの全てを管理することを意味します。サステイナブルな品質は、段ボールの椅子や竹の葉のグラスと違う持続する品質です。サステイナブルなデザインは、基本的には「永遠の象徴」的なオブジェクトである製品の寿命を敢えて考慮に入れ、再利用の可能性を検討する新しい方法です。
ますます循環経済の原則が取り入れられ、その単なる機能的側面を超え、共有と再利用のプロセスを考える環境に大きく注意を払うデザインです。デザインは、明日を見据えること。使用される素材だけでなく、製造プロセスも持続可能であること、そして何より国際品質基準を満たしていること、更には持続するデザインであることです。
次回の国際トリエンナーレ博覧会では、デザインの持続可能性と本質的な品質が取り上げられますが、ミラノサローネでは、都心にある特別展示にて、自然と生活の関係を調査、屋外空間の性質を屋内空間に持ち込み、明日の住居を考えます。
【プロジェクト】
企業と共に、家具製造システムの成功を支えるデザイナーと建築家は、ミラノサロー ネと、彼らのクリエイティビティに信頼を得ている生産者たちにも経緯を払っています。ミラノサローネに出展したことでコンパッソ・ドーロ賞を受賞したデザイナー たちは、ドバイ、ニューヨーク、北京、ロンドン、シドニー、東京など世界各国で更に数々の賞を受賞しています。
業界の恒例行事であるミラノサローネには、毎年世界中のクリエイターが新しい出会いを求めに、またはトレンドリサーチや新しいプロジェクトの基礎を築きに集結します。ミラノサローネは、イベントの成功、ブランドの成長、街の発展に貢献した巨匠、建築家、デザイナーに敬意を払っています。
そして今、ミラノサローネは、未来を見据えて新しいデザインと建築を考えるプロジェ クトを進めています。物事を越えたデザイン、人を観察し、日常生活のちょっとした美に対する感動も見逃しません。ミラノは近年、高層建築などの建設が後を絶ちませんが、同時に歴史的建造物の再認識も忘れていません。ミラノサローネ期間中に限らず年間通して世界中から人々を受け入れ魅了し続けるための努力を惜しみません。
【ネットワーク】
ネットワーキングとは、まず文化(ミラノサローネには160カ国以上から来場者が訪 れます)、そして場所(ミラノサローネは街中でも特別展示を開催します)、更に経験と新しい形のホスピタリティを意味します。
「シェア(共有)」はよく使われる言葉ですが、ミラノサローネがシェアするのは、ミラノ市との関係で、どちらにとっても切っても切れない縁なのです。ミラノサローネの一週間は情報関連からテクノロジー、食品産業まで、さまざまな分野の多国籍の企業が同じ空間に「共有」を求めて集います。多国籍の企業はミラノに来て、ミラノサローネで商品を発表します。
なぜなら、ここでしか彼らのターゲットとなるクライアントに出会うことが出来ないからです。アイデア、ニーズ、経験を共有し、ネットワークを発展させることは、それぞれの技術、特異性、能力を互いに高め、ミラノサローネとミラノ市によい結果をもたらします。会期後には、ミラノに魅了された多くの企業がミラノに経済効果をもたらし相乗効果が生まれることを目的としています。
【若者たち】
当時、サローネサテリテと命名されていたかどうか記憶しておりませんが、色々なデザイン分野の学生、若手デザイナー数名をひとつのグループとして、それぞれの創造する空間やエレメントをデザインする「チャレンジ」「変革」「協働」をテーマに作り上げたのが写真の作品です。
ミラノサローネが新しいものを求めさらに、デザインの未来を模索していた時代でした。一時途絶えたと聞いていましたが、続いていたのですね~この写真は、サローネサテリテ始まりの写真になります。(ひとつの展示棟を若者に提供して横4m×縦3m位のブースが壁四面に50以上あり汗だくになりながら全て撮影したのですが残っていたのはこの2枚だけだったとは・・・残念。)
中央の空間には、やはり若者たちが協働して作り上げたオブジェやプロトタイプの家具・照明、精密で実寸の木製フィアット車などが所狭しと展示されていました。
きっとその時の若者たちは現在、現役のデザイナーとして第一線で活躍しておられることでしょう・・・そのように願っています!
ミラノサローネでは20年以上にわたり、世界のクリエイティブな若者の才能を育む展示、サローネサテリテを開催しています。サローネサテリテでは、未来のデザイ ンを暗示するプロトタイプを展示します。参加デザイナーは、自己の作品を製品化する適切な企業を見つけることができたり、また逆に、新しいアイデアを求めて偵察にくる企業の目に留り製品化されたり、と、需要と供給が一致する最も理想的な場でありましょう。
ミラノには、世界の中でも優れたデザインの学校や大学などがあり、多くの若者がデザインを学びに国内外からやってきます。そして自国へ戻る若者、またはイタリアから国外へ旅立つ若者は、イタリアで学んだ文化やスタイルを他国へ伝えま
す。ミラノは彼らにとっては、可能な限り手を差し伸べる誠実でダイナミックな存在です。
【コミュニケーション】
ミラノはイタリアのメディアの中心です。大きな全国紙からデザイン誌、ファッショ
ン誌もみな出版社はミラノに集結しています。また、ミラノサローネには毎年5,000人以上のジャーナリストが世界中から来場します。代理店、クリエイター、グラフィッ
クデザイナーで統合されたコミュニケーションシステムが構築され、ミラノサローネの歴史を含めた全ての情報ツールを使用して会期中の一週間、来場者を迎えます。
新しいデジタルツールにより、国境やあらゆる障壁を超えて、情報の普及拡大の可能性を広げます。
【文化】
ミラノスカラ座の右隣、数階建ての石造りの建築物すべての窓に描かれた「だまし絵」
紳士と淑女が描かれていましたが、現在も存在しているかは不明です・・・
だまし絵は、コモ湖のヴィラ・デ・エステの建物の外壁に木造に似せて描かれています。
ついでと申し上げては失礼ですが、フランス・パリには、レンゾ・ピアノデザインによるジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(通称 ポンピドゥーセンター)正面左斜め前のレストラン横の建物の1階から4階・5階までの年季の入った木製建具(窓)にピエロなどの「だまし絵」が描かれています。恐らく現存していると思います・・・ヨーロッパには、遊び心で「だまし絵」があちらこちらにあるので探してみるのも一興かも~
ミラノサローネは、デザインの文化を広めるだけでなく、現代デザインと文化的、芸術的な遺産とが調和し、明日のデザインを提案します。さまざまな表現や異なる言語が混じり合い、溶け合い、最高級のプレゼンテーションを生み出します。
また、ミラノサローネは、ミラノ市内の巨大な文化遺産に触れる大切な時間でもあります。
スカラ座、各種市民博物館、美術館、王宮、ブレラ美術館、そしてトリエンナーレデザイン美術館。これらはミラノのクリエイティビティを再発見する宝庫です。トリ
エンナーレ美術館には、真のデザインと建築の空間があります。人々、モノ、ビジ
ネス、企業、イベントの歴史が語られています。ミラノには、ここにしかない美術館があります。
【ミラノ】
ミラノは他の多くの都市と結びついている国際都市です。
イタリアの国そのものと同じく、文化や美しさに富み、勤勉で国際的な性格を持ち合わせています。ミラノは、小さいながらも「大きな」街、その原動力となる卓越性が集中している街です。ミ
ラノ市が「ミラノ・ダ・ベーレ(手に入れたい街)」と提唱しているように、モノが形となり、コミュニケーションを計る空間です。
また、10年以上前、多くの批判を浴びながら見本市会場が市内から隣町のロー市に移転され、マッシミリアーノ・
フクサス設計による新見本市会場が建設されましたが、結果、会場は効率的な地下鉄でミラノ市内を結び、高速列車でトリノへ50分、ボローニャへ60分、フィレン
ツェへ100分と利便性を確保、ミラノサローネの成功が会場移転への反対意見を見事に覆しました。
また、会期中はミラノ市内が新しい街に塗り替えられます。街中のあらゆる店舗や貸しスペースが新しいクリエイティブなウィンドウに生まれ変わります。これがフオーリサローネです。ミラノデザインウィークの一週間、ミラノサロー
ネは、ビジネスと人々を繋ぎ、フオーリサローネをはじめ、全てを寛大に巻き込み、共有し、街を一体化した唯一無二のモデルケースです。
【インジェヌイティ 】
ミラノサローネの歩みは歴史的に創意工夫によってなぞられています。それは創造性の原則、才能の感覚、実行力、そして考える能力としての知性の概念として、的確に表現されています。見本市の出展企業の特徴は、企業と協業するデザイナーが 常に発展し、製造システムの伝統が根付き、提供することができたことです。
イン
ジェヌイティ (創意工夫)とは “プレシャス=貴重なもの” の源であり、刺激を受けながら成長し発展します。新しいトレンドがある方向を知覚する能力です。成長と発展の場は、今日、創造的思考が形を成し、それがモノであるか、製品であるか、もしくは概念であるか、という考えを実証する“知識の経済”です。今日のインジェヌイティは、未来を見据えた新たな目で常に全てを再発明し、再発見することができると考え、その場で満足せず、先を見越すことです。
同時にインジェヌイティ は、没後500年を記念し、万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチへ、そして彼のパトロ
ンたちとのコミュニケーション能力、彼が残した膨大な素晴らしい研究成果と、ミ
ラノにいた約20年間に生み出され現在に至るまで残された天才的作品群へ敬意を表します。
Salone del Mobile.Milano 2019
ミラノサローネ国際家具見本市盛況のうちに閉幕
第58回 サローネ国際家具見本市(以下、ミラノサローネ)は、6日間で181カ国から38万6,236人を記録、隔年開催見本市のエウロルーチェ、Workplace3.0が開催された2017年度に比べ12%増を記録し、来場者数、ビジネス、そして見本市の質、全ての観点において非常に高い注目を集めました。
ミラノサローネ・プレジデント
クラウディオ・ルーティ氏のコメント:
「我々は今回のミラノサローネを非常に前向きに捉えています。我々は品質に投資 し、デザイナー、職人、広報機関と文化関係者と密接に協力しながら、製品や革新のプロセス、そしてデザインオブジェクトの価値を高めるための『物語』を生み出し続けています。その結果、売り上げが伸びただけでなく、我々の熱意、システムを構築して物事を進める能力に誰もが気付き、アイデアが重視されるグローバルな経験を提供しています。ミラノサローネは、ミラノと関連機関との深い結びつきを 維持しつつ、今や業界で唯一の見本市として業界関係者や一般来場者を魅了し続けています。」
ビジネスと市町村が強く結びくミラノサローネと家具業界がイタリア経済にとって非常に重要であるということは、首相をはじめてとする多くの政府関係者や関連機関が見本市を訪れることが証明しています。
サローネサテリテに参加した35歳未満の550人のデザイナー数と5つの見本市(サロ
ーネ国際家具見本市、サローネ国際インテリア小物見本市、エウロルーチェ、
Workplace3.0、S.Project)の出展企業数を合わせた2,418の出展数は、そのうち43カ国から34%の海外出展数を記録しました。
FLA Eventi社
(ミラノサローネ運営会社のイタリア家具工業連盟イベント会社)の
エマヌエーレ・オルジーニ社長のコメント:
「投資、創造性、熱意。これらは、起業家が見本市の成功の支援に挑む際に掲げた言葉です。国際市場の課題に取り組むため集まり業界の重要性を実証しました。世界レベルでミラノサローネが成功を収めている理由は、ミラノサローネを世界でメード・イン・イタリーを拡大する上で重要な役割を果たしているとイタリア大使館貿易促進部(ICE)が認識していることに加え、コンフィンドゥストリア(イタリア産業総連盟)が見本市において史上初の総会を開催し、貿易の成功に貢献するだけでなく、国の経済にとって至宝の一つと言えるビジネスを支援するため政治と非常に現実的な対話を進める必要性を強調しました。」
併催イベント「アクア:レオナルドのウォーター・ビジョン」もまた、1日平均 2,000人を超える来場者を魅了しました。バリッチ・ワールドワイド・ショーズと提携し考案されたイベントは、Conca dell’Incoronata(コンカ・デッラ・インコ ロナータ)に新たな命を吹き込み、ミラノ市内においてもサローネの存在感をアピ ールしました。
また、見本市会場内では、ルネッサンスの天才に捧げられたインスタレーション「DE-SIGNO(デ・シーニョ)」が開催され、多くの来場者を集客しました。レオナルドが残したイタリアデザイン文化を堪能するイベントは、ダビ
デ・ランペッロがキュレーションし、ディエゴ・アバタントゥオーノの美しい声によるナレーションに乗せて、現代のビジネスとレオナルドのデザインスキルを比較対照し来場者を魅了しました。
ミラノサローネは、ミラノ市に加え、ミラノ・スカラ座財団と戦略的パートナーシ ップを組み、ミラノサローネが60周年を迎える2021年まで3年間の提携を結びました。スカラ座音楽葬監督のリッカルド・シャイーによる前夜祭のコンサートとガラ・ディナーは、スカラ座の舞台上で行われました。また、4月12日のジュゼッペ・サーラ市長が主催したマリーノ宮(市庁舎)でのクロージング・セレモニーで は、マリオ・ベリーニ氏に「スペシャル・ライフタイム・アワード」が贈られまし た。この賞は、数多くのミラノサローネ出展企業とのコラボレーションにおいて、ミラノサローネへの多大なる貢献に感謝の意を表したものです。
次回ミラノサローネは、2020年4月21日から26日まで開催予定です。
第18回BELCA賞ロングライフ部門表彰
伊勢丹本店本館
建築当時世界的に流行したアールデコ調の装飾をふんだんに使っています。
装飾性の豊かな低層部分の上に、外観の柱で垂直線を強調した上層部分が続き、屋上には明治通りと新宿通りに面して二つの塔が建っています。
所在地 東京都新宿区新宿3丁目14番1号
竣工年(改修年) 1933年(1986,93,03,06年改修)
建物用途 百貨店
建物所有者 ㈱伊勢丹
設計者 清水建設㈱一級建築士事務所
施工者 清水建設㈱
維持管理者 ㈱伊勢丹ビルマネジメントサービス
伊勢丹本店本館は、東京の副都心『新宿』のイメージを今に残す代表的建築であります。
明治19年(1886年)神田明神下に伊勢屋丹治呉服店として創業した「伊勢丹」が新開地である新宿に百貨店として進出することになったことが発祥の原点であります。
昭和8年(1933年)竣工以来75年(現在87年)、そして創業122年という長い歴史を持った建築でありますが、すでにその当時欧米で流行していた建築様式アール・デコをデザインの随所に取り入れ、現在のそれにも残されている低層部の石の彫りこみやブロンズのレリーフなど建設当時の面影を見ることが出来ます。
それ以来、隣接する建物の買収合併を行い、昭和40年(1965年)までに14期に及ぶ増改修を行っていますが、とりわけ現在の外観のデザイン的特長を生み出したのは、昭和11年(1936年)の外装改修であり、ほぼ現在の姿になっています。
そして昭和61年(1986年)には伊勢丹創業100周年事業の一環として、全館の外装全面改修を行い、時代のニーズに合わせた耐久性と安全性を考慮し、高層部のテラコッタとタイル、スチールサッシュは、既存のテラコッタとタイルのイメージそのままにGRCパネルやアルミサッシュに置き換えながら、昭和初期のアール・デコ調のデザインとしてのDNAは担保しつつ、近代化された装い(ファサード)が今日の姿であります。
さらに、この伊勢丹本店本館の特徴は、14期(ブロック)に及ぶ増築(つなぎ合わせ)による店舗としての一体的利用を図りながら、今日の大型店舗に相応しい床面積の拡大をし続けてきたことであります。平成15年(2003年)からの5年にわたる全面的な耐震補強を行い、現行法規と同等の耐震性能をもたせています。
また、維持管理、保全に関しては、長期保全計画を作成し、増改築ごとに、設備改修・更新が図られ、さまざまな省エネルギー化が図られ、同時に省エネルギー機器の導入がなされています。とりわけ、井水上水化プラントを導入し、その使用量削減に努めているなど、その実効性には細部にわたって、きめ細かい配慮がなされています。また、屋上の利用については、単なるデパートの屋上の集客空間とすることなく、今日的なテーマ性を持って、都市の公共性に鑑み、芝生広場や四季をテーマとした回遊式庭園など、積極的な都市の緑化と公共の開かれた空間を生み出しています。
今日まで、以上のような複雑多岐にわたる増改築や改修、そして時代の要請にも応えながら、経済的価値を優先しがちな商業建築なれども、優れて新宿という街の存在意義を高め続けてきた役割とその精神のゆるぎない持続性には敬意を示す他ありません。いまや新宿のランドマークとして、その歴史的かつ街の継続的意義を含めてかけがえのない存在になっている点は、本賞ロングライフ部門に相応しい評価に繋がるものであります。
公益社団法人 ロングライフビル推進協会(BELCA)認定
BELCA賞とは
BELCA 賞は、長期にわたって適切な維持保全を実施したり、優れた改修を実施した既存の建築物のうち、特に優秀なものを選び、その関係者を表彰することにより、わが国におけるビルのロングライフ化に寄与することを目的とする表彰制度です。
賞はロングライフ部門とベストリフォーム部門の2部門からなり、ロングライフ部門では、長期使用を考慮した設計のもとで建設されるとともに、長年にわたり適切に維持保全され、さらに今後相当の期間にわたって維持保全されることが計画されている模範的な建築物を表彰し、ベストリフォーム部門では社会的・物理的な状況の変化に対応して、今後の長期使用のビジョンを持って、蘇生させる、もしくは飛躍的な価値向上等をさせるリフォームがなされた模範的な建築物を表彰します。
賞の選考は、学識経験者と建物所有・設計・建設・設備・メンテナンス分野の実務に精通した委員からなる「BELCA賞選考委員会」により行われ、両部門合わせて10件以内で表彰建築物が決定されます。
受賞建築物の所有者には文化勲章受章者である故 帖佐美行氏作の賞牌が贈られます。
鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使
※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。
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