ZIPANG-3 TOKIO 2020 最澄は唐からの帰途、対馬に漂着「対馬 太陽の女神 オヒデリ【寄稿文11】西 護」

はじめに 記事をお届けするに当たり、この度の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。


対馬(つしま)は、九州本土と朝鮮半島の間に浮かぶ面積約710平方km (属島含む)の大きな島ですが、面積の89%は山地であり、全島が岩がちで、 農耕地は1%ほどしかありません。朝鮮半島までの距離は49.5kmしかなく、 国境の島と称されています。


魏志倭人伝に「南北に市糴(してき。米を買う=交易を行う)す」と描写さ れた対馬の海洋民は、島の中央に広がる浅茅湾を利用しつつ、航海術を駆使し、 大陸と日本列島の間を移動していました。  その活動が日本列島に金属器・文字・仏教などの大陸文化を伝えましたが、対馬海峡は危険に満ちており、対馬に海神信仰が定着したのもごく自然な成り 行きだったのでしょう。また、政祭一致の時代、中央の政治にも大きな影響を 与えた古代の占いの技術・亀卜(きぼく)も早くから伝わっていました。

14時頃、雷命神社で元山送りの神事が始まり、子どもたちを含む、地区の皆さんが参加します。


太陽の女神 オヒデリ

 オヒデリ 

神社庁登録なし、祭神 オヒデリ

所在地 厳原町阿連の山中

周辺の神社 雷命神社(18) 

アクセス 厳原町阿連集落奥に雷命神社があり、そこから阿連川を遡った山中に祠があります。


神社のプロフィール

集落内に雷命神社(番号18)がありますが、祭神の雷命は、旧9月29日(以下、すべて旧暦)に出雲に旅立って不在(神無月)となるため、川上に鎮座するオヒデリを里に迎えます。


11月1日に雷命が戻り、1週間オヒデリとともに暮らし、11月8日に大祭、 11月9日に住民総出でオヒデリを川上にお送りする神事(本山送り)が行われます。


この時オヒデリは懐妊しているとされ、雷神・水神・男神である雷命と、太陽神・女神であるオヒデリが和合し、里に豊穣がもたらされる、という古い民俗学の世界が今に伝わります。


周辺の雰囲気・環境など

厳原町阿連は対馬の南西部に位置し、西には対馬海峡東水道(朝鮮海峡)が広がり、三方を山に囲まれた半農半漁の集落です。戦後、道路整備が進むまで、ながらく陸の孤島でした。


山中に古い時代の鉱山があり、対馬に亀卜(きぼく。古代の占いの技術)を伝えたとされイカツオミ(雷大臣)が住み、遣唐使のひとりとして唐で修行をした最澄が帰途に漂着するなど、古い歴史と伝承に彩られています。


雷命神社(らいめいじんじゃ)

神社番号 18 式内社 

周辺の神社 オヒデリ

アクセス 厳原町阿連の集落奥に鎮座。


「お日照様の元山(本山)送り」の神事

雷命神社社殿前のイチョウの大木が折れています。

祭神は占いの神イカツオミですが、竜神・水神・雷神などの自然神の性格をもっています。近年、竜巻によりご神木が折れた事例があり、竜巻=竜神が発生する場所を選んで祭られたのかもしれません。

雷命神社でお祓いを受ける。宮司さんは、以前、阿連の古代鉱山跡を案内していただいた
橘 一門(たちばな かずかど)さん。

雷命神社でお祓いを受けた後、背中に御幣を刺してもらい、川を遡ります。

ここから先はオヒデリ様の神聖な領域。靴を脱いで裸足で歩きます。

川の途中にある、オヒデリ様の祠に到着。

対馬御幣を納め、ロウソクに火を灯し、子どもたちからお年寄りまで一緒に祈りを捧げます。
太陽(オヒデリ様)と雨(雷命)が調和し、里に平安と豊穣がもたらされるのです。
ちなみに雷命は、日本中の神様が出雲大社に集まる縁結び会議の帰りなので、神事に参加すればよいご縁に恵まれるかもしれません。
(家庭も職場も人生も、すべては人の縁の上に築かれていくので)

ちなみに漢字で書くと、「御日照」様。

オヒデリ様を紹介するにあたり、「秘祭」「奇祭」という冠も考えたのですが、むしろこちらが本来の祭りの姿のような気がします。

阿連(あれ)という集落は、「対馬の半農半漁の暮らしの原風景」であり、神事もごく当たり前のように生活に溶けこんでいるんだなあ、とあらためて感じました。

夜になっても、足の裏がホカホカしています。
足の裏は第2の心臓とも言われ、たまには裸足で歩くのもよいのかも。

令和元年参加したいと思った方は、ぜひ裸足で!!


「お日照様」神事のまとめ

・阿連には式内社(平安時代に公に祭られた格の高い神社)の「雷命神社」があり、祭神は「雷命」(いかづちのみこと)。

・雷命は、日本のほかの神々同様、旧暦の10月に出雲大社に旅立つため、阿連は一ヶ月間神様不在になる。(日本中から神々がいなくなるので「神無月」)

・雷命のいない間、ふだんは山にいる「お日照様」に里に降りてもらい、村を守ってもらう。

・雷命が阿連に帰ると、お日照様は旧11/1~11/8の間、一緒に暮らす。

・旧11/9に、お日照様を元の山にお返しする「お日照様の元山(本山)送り」の神事が行われる。この時、お日照は懐妊していると考えられている。

・雷命は竜神・水神・男神で、お日照様は太陽神・女神。この一連の神事は、雨と太陽がバランスよく結びつき、里に豊穣がもたらされる、という古い民俗世界を体現している。 



【寄稿文】 西 護

一般社団法人 対馬観光物産協会 事務局長



協力(順不同・敬称略)

一般社団法人 対馬観光物産協会 〒817-0021 長崎県対馬市厳原町今屋敷672番地1
観光情報館ふれあい処つしまTEL 0920-52-1566 


※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。 

 


ZIPANG-3 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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