はじめに 記事をお届けするに当たり、この度の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。
対馬(つしま)は、九州本土と朝鮮半島の間に浮かぶ面積約710平方km (属島含む)の大きな島ですが、面積の89%は山地であり、全島が岩がちで、 農耕地は1%ほどしかありません。朝鮮半島までの距離は49.5kmしかなく、 国境の島と称されています。
魏志倭人伝に「南北に市糴(してき。米を買う=交易を行う)す」と描写さ
れた対馬の海洋民は、島の中央に広がる浅茅湾を利用しつつ、航海術を駆使し、
大陸と日本列島の間を移動していました。
その活動が日本列島に金属器・文字・仏教などの大陸文化を伝えましたが、対馬海峡は危険に満ちており、対馬に海神信仰が定着したのもごく自然な成り
行きだったのでしょう。また、政祭一致の時代、中央の政治にも大きな影響を
与えた古代の占いの技術・亀卜(きぼく)も早くから伝わっていました。
14時頃、雷命神社で元山送りの神事が始まり、子どもたちを含む、地区の皆さんが参加します。
太陽の女神 オヒデリ
オヒデリ
神社庁登録なし、祭神 オヒデリ
所在地 厳原町阿連の山中
周辺の神社 雷命神社(18)
アクセス 厳原町阿連集落奥に雷命神社があり、そこから阿連川を遡った山中に祠があります。
神社のプロフィール
集落内に雷命神社(番号18)がありますが、祭神の雷命は、旧9月29日(以下、すべて旧暦)に出雲に旅立って不在(神無月)となるため、川上に鎮座するオヒデリを里に迎えます。
11月1日に雷命が戻り、1週間オヒデリとともに暮らし、11月8日に大祭、
11月9日に住民総出でオヒデリを川上にお送りする神事(本山送り)が行われます。
この時オヒデリは懐妊しているとされ、雷神・水神・男神である雷命と、太陽神・女神であるオヒデリが和合し、里に豊穣がもたらされる、という古い民俗学の世界が今に伝わります。
周辺の雰囲気・環境など
厳原町阿連は対馬の南西部に位置し、西には対馬海峡東水道(朝鮮海峡)が広がり、三方を山に囲まれた半農半漁の集落です。戦後、道路整備が進むまで、ながらく陸の孤島でした。
山中に古い時代の鉱山があり、対馬に亀卜(きぼく。古代の占いの技術)を伝えたとされイカツオミ(雷大臣)が住み、遣唐使のひとりとして唐で修行をした最澄が帰途に漂着するなど、古い歴史と伝承に彩られています。
雷命神社(らいめいじんじゃ)
神社番号 18 式内社
周辺の神社 オヒデリ
アクセス 厳原町阿連の集落奥に鎮座。
「お日照様の元山(本山)送り」の神事
雷命神社社殿前のイチョウの大木が折れています。
祭神は占いの神イカツオミですが、竜神・水神・雷神などの自然神の性格をもっています。近年、竜巻によりご神木が折れた事例があり、竜巻=竜神が発生する場所を選んで祭られたのかもしれません。
雷命神社でお祓いを受ける。宮司さんは、以前、阿連の古代鉱山跡を案内していただいた
橘 一門(たちばな かずかど)さん。
雷命神社でお祓いを受けた後、背中に御幣を刺してもらい、川を遡ります。
ここから先はオヒデリ様の神聖な領域。靴を脱いで裸足で歩きます。
川の途中にある、オヒデリ様の祠に到着。
対馬御幣を納め、ロウソクに火を灯し、子どもたちからお年寄りまで一緒に祈りを捧げます。
太陽(オヒデリ様)と雨(雷命)が調和し、里に平安と豊穣がもたらされるのです。
ちなみに雷命は、日本中の神様が出雲大社に集まる縁結び会議の帰りなので、神事に参加すればよいご縁に恵まれるかもしれません。
(家庭も職場も人生も、すべては人の縁の上に築かれていくので)
ちなみに漢字で書くと、「御日照」様。
オヒデリ様を紹介するにあたり、「秘祭」「奇祭」という冠も考えたのですが、むしろこちらが本来の祭りの姿のような気がします。
阿連(あれ)という集落は、「対馬の半農半漁の暮らしの原風景」であり、神事もごく当たり前のように生活に溶けこんでいるんだなあ、とあらためて感じました。
夜になっても、足の裏がホカホカしています。
足の裏は第2の心臓とも言われ、たまには裸足で歩くのもよいのかも。
令和元年参加したいと思った方は、ぜひ裸足で!!
「お日照様」神事のまとめ
・阿連には式内社(平安時代に公に祭られた格の高い神社)の「雷命神社」があり、祭神は「雷命」(いかづちのみこと)。
・雷命は、日本のほかの神々同様、旧暦の10月に出雲大社に旅立つため、阿連は一ヶ月間神様不在になる。(日本中から神々がいなくなるので「神無月」)
・雷命のいない間、ふだんは山にいる「お日照様」に里に降りてもらい、村を守ってもらう。
・雷命が阿連に帰ると、お日照様は旧11/1~11/8の間、一緒に暮らす。
・旧11/9に、お日照様を元の山にお返しする「お日照様の元山(本山)送り」の神事が行われる。この時、お日照は懐妊していると考えられている。
・雷命は竜神・水神・男神で、お日照様は太陽神・女神。この一連の神事は、雨と太陽がバランスよく結びつき、里に豊穣がもたらされる、という古い民俗世界を体現している。
【寄稿文】 西 護
一般社団法人 対馬観光物産協会 事務局長
協力(順不同・敬称略)
一般社団法人 対馬観光物産協会 〒817-0021 長崎県対馬市厳原町今屋敷672番地1
観光情報館ふれあい処つしまTEL 0920-52-1566
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