ZIPANG-3 TOKIO 2020「甲武信ユネスコパーク認定勧告について」ご案内

はじめに 記事をお届けするに当たり、先の北海道における地震災害、関西地方ならびに中国四国・九州地方における大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。



※ 核心地域と緩衝地域は、秩父多摩甲斐国立公園、秩父山地生物群集保護林、金峰山生物群集保護林や秩父山地緑の回廊等に指定されており、適切な保護・保全が図られている。

※ 移行地域は、国立公園に隣接する山間地や山間盆地を主としている。第一次産業を中心とした土地利用がなされ、自然環境の保全と調和した持続可能な発展を念頭に置いた取り組みが推進されている。

川上村 金峰山頂上

川上村 金峰山頂上から雲海の眺め 

川上村 金峰山 源流と植物群


ユネスコが実施する生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)に関し、我が国から推薦していた「甲武信(こぶし)」(構成地域:山梨県、埼玉県、長野県、東京都)について、「人間と生物圏(MAB)計画国際諮問委員会」により、ユネスコエコパークへの登録を「承認」するとの勧告がなされました。


1.概要

生物圏保存地域(国内呼称:ユネスコエコパーク、英名:Biosphere Reserves(BR))は、生物多様性の保全、持続可能な開発、学術研究支援を目的として、昭和51年(1976年)に、ユネスコが開始した制度です(別添1)。ユネスコエコパークの登録は、各国からの推薦を基に、「人間と生物圏(以下、MABとする)計画国際諮問委員会」が登録の承認について勧告を行い、最終的に「ユネスコMAB計画国際調整理事会」において審議、決定されます。


この度、ユネスコウェブサイトにおいて、「MAB計画国際諮問委員会」による勧告内容が公表され、我が国から推薦していた「甲武信(こぶし)」(構成地域:山梨県、埼玉県、長野県、東京都)については、ユネスコエコパークへの登録を「承認」するとの勧告がなされました。今後、本年6月の「第31回ユネスコMAB計画国際調整理事会(6月17日~6月21日、於:パリ・ユネスコ本部)」で正式に登録の可否が決定する見込みです。


【参考:ユネスコエコパークについて】

「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」に基づく世界遺産が、手つかずの自然を守ることを原則とする一方、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和(自然と人間社会の共生)が目的です。我が国では、「保全機能」、「経済と社会の発展」、「学術的支援」の三つの機能を持つ地域を登録することとしており、そのため、ユネスコエコパークでは、「核心地域」、「緩衝地域」と共に、「移行地域」を設置しています。登録総数は、世界122か国、686地域で、国内は9か所です(2018年(平成30年)7月現在)。「甲武信」が登録されると、国内10か所目となります。


核心地域:厳格に保護され、長期的に保全されている地域

緩衝地域:核心地域を保護するための緩衝的な地域

移行地域:人が生活し、自然と調和した持続可能な発展を実現する地域 


2.今回の勧告地域について

「甲武信(こぶし)」(詳細は「『甲武信』の概要について」にて)

日本一の渓谷美、昇仙峡の主峰『覚円峰』


核心地域及び緩衝地域は、首都圏や周辺地域の水源域として、山岳や森に加えて御岳昇仙峡(みたけしょうせんきょう)等の渓谷が、四季折々に彩りを変える日本的な美しい自然に恵まれており、首都圏近郊にありながら、連続性があり、生物多様性に富む貴重な生態系が広く保存されていることが、本候補地の大きな特徴です。


林野庁では、「秩父山地生物群集保護林」、「金峰山(きんぽうさん)生物群集保護林」や「秩父山地緑の回廊」を設定し、適切な保全・管理を行っています。また、移行地域においては、山梨県の峡東地域は、江戸時代以前よりブドウやナシ、モモ等の果樹栽培で知られ、自然の地質・気候を活かした産業として、固有の品種である「甲州ぶどう」を守るなど、持続可能な形で農業が進められています。

また、秩父市を中心に地域固有のソバの品種が守られており、荒川上流部の澄んだ源流を利用して栽培されたソバは「秩父蕎麦」として、祭事やお正月等に出す御馳走として振る舞われています。地域固有の野菜としては、「大滝いんげん」、「中津川いも」、「しゃくし菜」等があり、地質や気象等に適した品種が守られています。


ぶどう寺 大善寺「国宝 薬師如来」

養老二年(AD718)僧行基が甲斐の国を 訪れたとき、勝沼の柏尾にさしかかり、日川の渓谷の大石の上で修行したところ、満願の日、夢の中に、手に葡萄を持った薬師如来が現れました。

行基はその夢を喜び、早速夢の中に現れたお姿と同じ薬師如来像を刻んで安置したのが、今日の柏尾山大善寺です。

以来、行基は薬園をつくって民衆を救い、法薬の葡萄の作り方を村人に教えたので、この地に葡萄が 栽培されるようになり、これが甲州葡萄の始まりだと 伝えられています。

薬師三尊像は秘仏として厨子の中に納められ、通常は拝むことは出来ません。
しかし、五年に一度扉が開かれお姿を拝むことが出来ます。


3.評価のポイント

水源地としてのエコシステムを保全し、林産物をはじめ天然資源を持続的に活用する努力をしている点が評価されています。また、人口減少や農業、林業といった地場産業の後継者育成等の課題がある中、エコパークが同地域の活性化を担うことが期待されています。


4.今後のスケジュール

令和元年(2019年)6月のユネスコMAB計画国際調整理事会において登録の可否が決定されます。


5.その他

「甲武信(こぶし)」について、ユネスコエコパークへの登録は、農林水産省、文部科学省、環境省が携わっています。


参考

生物圏保存地域(ユネスコエコパーク) について

ユネスコが1976年(昭和51年)に開始した、生物圏保存地域 ※( 国内呼称:ユネスコエコパーク ) は、ユネスコ自然科学セクターのユネスコ人間と生物圏(MAB : Man and theBiosphere)計画の枠組みに基づいて国際的に認定された地域。

※英名: Biosphere Reserves (BR)

世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然地域を保護・保全するのが目的であるのに対し、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、保護・保全だけではなく自然と人間社会の共生に重点が置かれている。
登録総数は、122か国、686地域(2018年(平成30年)7月現在)。


ユネスコパークの機能

1.保存機能(生物多様性の保全)

2.経済と社会の発展

3.学術的研究支援

個々の機能は独立のものではなく、ユネスコエコパークの機能を相互に強化する関係。この三つの機能を達成するためエコパークの中に、相互に依存する下記の三つの区域を設定。


核心地域 ー生物多様性を保全する地域ー

・西の瑞牆山から東の雲取山まで、奥秩父主稜の亜高山帯が連なる源流の地
・首都圏に近接しながら、生物多様性に富む、自然環境が保全される地域


緩衝地域 ー核心地域のバッファー、学術的研究支援を行う地域ー


・地域資源を活用したエコツーリズムや環境学習の推進の場
・急峻な谷と山岳が生む、渓谷美、景観


移行地域 ー経済と社会の発展を行う地域ー

・地域資源を活用した農産物や伝統工芸品の生産等の経済活動
・伝統文化の保全・継承



国内のユネスコエコパーク

日本のユネスコエコパークは以下の9か所である。それらの核心地域や緩衝地域は、国立・国定公園や国有林の保護林として保全されている。

1980年(昭和55年)登録
「志賀高原」(長野県、群馬県)
「白山」(富山県、石川県、福井県、岐阜県・ひだ荘川ほか)
「大台ヶ原・大峯山・大杉谷」(奈良県、三重県)
「屋久島・口永良部島」(鹿児島県)

2012年(平成24年)登録
「綾」(宮崎県)

2014年(平成26年)登録
「只見」(福島県)
「南アルプス」(山梨県、長野県、静岡県)

2017年(平成29年)登録
「祖母・傾・大崩」(宮崎県、大分県)
「みなかみ」(群馬県、新潟県)



「甲武信」の概要について

3.特徴等:

○特徴

・甲武信ヶ岳、金峰山、雲取山等の日本百名山に挙げられる山々が連なる奥秩父主稜を中心に、これを源流とする荒川、多摩川、笛吹川(富士川)、千曲川(信濃川)流域にまたがる地域をエリアとしている。

・この地域は、山岳や森に加えて御岳昇仙峡等の渓谷が、四季折々に彩りを変える日本的で素朴な美しい自然に恵まれており、首都圏近郊にありながら、連続性があり、生物多様性に富む、貴重な生態系が広く保全されている。

・古来人々を楽しませてきた民俗芸能が保全・伝承され、山岳・神社信仰にまつわる多様な文化が、今もなお息づいている地域でもある。

・山肌を覆う深い森は、首都圏や周辺地域の水源域として古くから守られてきており、現在でも上流域と下流域の水の繋がりを意識して、森づくりや自然保護等に取り組む団体や事業者、地域住民も多い。

・国内最大の生産量を誇るモモやブドウなどの果樹や高原野菜における環境配慮型の農業や、FSC森林管理認証による林業など、持続的な農林業も広く営まれている。


○面積

総面積 190,603ha

・核心地域 13,364ha

・緩衝地域 70,858ha

・移行地域 106,381ha


※ 核心地域と緩衝地域は、秩父多摩甲斐国立公園となっている。また、秩父山地生物群集保護林、金峰山生物群集保護林や秩父山地緑の回廊等に指定しており、適切な保護・保全に努めている。

※ 移行地域は、国立公園に隣接する山間地や山間盆地を主としている。第一次産業を中心とした土地利用がなされ、自然環境の保全と調和した持続可能な発展を念頭に置いた取り組みが推進されている。



人間と生物圏(MAB)計画国際諮問委員会からの勧告要旨
(「甲武信」)


〇甲武信は、関東山地を取り囲む広大な山脈地域である。同地域の中心には奥秩父主脈があり、雲取山から甲武信ヶ岳・金峰山まで山脈が広がっている。奥秩父主脈は、少なくとも 2,000 メートル以上の高さを誇る 20 以上の峰から成る山脈で、域内に活火山は存在しない。また、同地域は、荒川、多摩川、笛吹川、千曲川を含む主要な河川の水源域として機能している。


〇推薦される地域は、全体で 190,603ha の広さを誇り、核心地域 13,364ha、緩衝地域 70,858ha、移行地域 106,381ha から成る。


〇同地域の植物の多様性は豊かな地層と岩石の種類によるものであり、この多様な環境に生息する動物もまた豊富であり、日本国内で観測される 320 種類の蝶のうち、24 種の絶滅危惧種を含む 126 種類の蝶が観測されており、推薦地域を希少な種の宝庫とたらしめている。


〇長野県に位置する緩衝地域は千曲川の上流に位置し、明治時代には、同地域で生成されたカラマツが国内のみならず、韓国・満州からヨーロッパに至るまで海外マーケットでも広く販売されていた。山梨県に位置する移行地域では、ブドウ、カキ、モモが江戸時代より栽培されており、同地域で生産された果樹は高価なものとして捉えられ、日本における主要な果樹生産地として認識されている。長野県に位置する移行地域は、農地として利用されており、レタスや白菜といった高原野菜を生産していることで有名である。

川上村の高原野菜レタスの栽培は日本一

〇金峰山、三峯山を含む主脈に連なる山々は崇拝の対象であり、同地域の修験道の信仰者や神社は、古くから守られてきた環境を保護するため、木々の伐採を禁じている。

金峰山頂上 山開き


〇推薦地域は、大学と機能的な協力体制と連携体制を築いている。


〇推薦地域の総人口は、213,321 名(核心地域 14 名、緩衝地域 1,371 名、移行地域 211,936 名)で、人口減少や農業、林業といった地場産業の後継者育成が課題となっており、エコパークが同地域の活性化を担うことが期待される。


〇推薦地域の概要に加え、経営プランにおいては、人間と生物圏(MAB)計画が目指す仕組みを確実なものとするための、生物多様性保護に向けた基本的な政策、学術研究、持続可能な活用、さらにはエコパークの活動プラン及び構想を促進するための組織体系が提示されている。


〇水源としてのエコシステムを保全し、林産物をはじめ天然資源を持続的に活用する努力をしていることを評価し、生物圏保存地域として登録することを勧告する。



鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」の明和町観光大使



協力(順不同・敬称略)

川上村役場 〒384-1405 長野県南佐久郡川上村大字大深山525 電話:0267-97-2121

金峰山小屋 〒384-1404 長野県佐久郡川上村居倉535-60 電話:0267-99-2030

昇仙峡観光協会TEL 055-287-2158

昇仙峡ロープウェイ株式会社〒400-1217 山梨県甲府市猪狩町441 TEL 055-287-2111

金櫻神社 〒400-1218 山梨県甲府市御岳町2347 TEL 055-287‐2011 

柏尾山 大善寺(ぶどう寺) 〒409-1316 山梨県甲州市勝沼町勝沼3559 TEL 0553-44-0027

農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1 電話:03-3502-8111(代表)

文部科学省〒100-8959 東京都千代田区霞が関三丁目2番2号 電話:03-5253-4111(代表)

環境省〒100-8975 東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館 TEL 03-3581-3351




※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。


ZIPANG-3 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

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