ZIPANG-3 TOKIO 2020~全国の姥神像行脚(その9)~蔵王「月山不動と姥神像の関わりとは」・・・    【寄稿文】廣谷知行

はじめに 記事をお届けするに当たり、この度の九州豪雨と山形沖の地震災害、並びに近年の北海道・関西地方、並びに中国四国・九州地方他、多くの大雨・地震災害で未だ行方不明、並びに亡くなられた皆様のご冥福をお祈りするとともに、被災された全ての方々に心よりお見舞い申し上げます。

蔵王連峰「樹氷」


姥神(うばがみ)とは

姥神の定義の説明の前にまず、奪衣婆の説明をさせていただきたい。 奪衣婆とは、死後にあの世へ渡るための三途の川の岸辺にいて、亡者の衣を脱がせる存在である。なぜ脱がせるのかと言うと、その衣を衣領樹(えりょうじゅ)と呼ばれる木の枝にかけるためである。そうすると生前の罪の大きい者は枝が大きく下がり、小さい者はほとんど動かない。亡者の罪はその衣に重さとなって染み込んでいることになる。衣領樹は罪を量るはかりであり、それを審査するのが奪衣婆である。
  

月山不動の入り口に祀られている姥神像


山形県の月山不動

蔵王山田の棚田

不動尊像と小さな滝

不動尊像の両脇の童子像は制多迦童子(せいたかどうじ)と矜羯羅童子(こんがらどうじ)か・・・

西国三十三観音

山形県蔵王連峰の麓、蔵王山田の棚田手前に月山不動があります。
舗装されていない参道の奥に本堂があり、その奥に不動尊像と小さな滝が。不動尊像の両脇に童子の像が2つあるため、おそらく制多迦童子(せいたかどうじ)と矜羯羅童子(こんがらどうじ)だと思われます。また、参道途中には西国三十三観音も祀られています。

その縁起は、明和6(1769)年に平清水の善助がお告げを受け、その後月山の峯から村の南方の滝に来迎されたので月山不動として祀られ、男女貴賎の別なく参詣したとのこと。さらに安永4(1775)年に村長の利右衛門の夢枕に熊野権現が現れ、「村の山中下着沢の水上に、新たに不動明王が現れ村内の病厄を退散させる」との神霊を受けて不動明王を祀ったということです。


月山不動の入り口の姥神像(右端)※トップの姥神像はこの姥神像をアップしたものです


この月山不動の入り口に姥神像が祀られています。これまで述べてきましたが、姥神像と出羽三山は関係が深く、主に女人禁制の意味で祀られていると考えられますので、私も初めはここが月山の不動尊なので祀られたのかと思いました。


しかし、この姥神像はもともとこの月山不動の目の前、瀧山にあったものを移動してきたものだとのこと。また、縁起での「男女の別なく」という文言があることから女人禁制のために置かれた可能性は低いと思われます。


瀧山にはその登山道途中に姥神が祀られており、この月山不動がある場所も瀧山の手前になっていますので、月山不動に置かれた姥神像は瀧山への女人禁制の目的で造られた可能性が高いと思われます。


しかしながら山形、特に村山地方では不動明王を祀った場所に姥神像を置いてある場所が多く見られます。不動明王は大日如来の化身であり、大日如来は湯殿山の本地仏であることから湯殿山と姥神の関係が不動明王との関係に発展したのではないかとも考えることができ、このとき、月山と不動明王が結びついているこの「月山不動」がもとになっているかもしれません。

東根市若木神社の姥神像 


山形県東根市の若木神社にも姥神像が祀られていますが、その像容は月山不動と非常に似ています。おそらく同じ石工が制作したものと考えられます。  現在は若木山の麓にある同神社の境内にありますが、以前は若木山の中腹にあったそうです。若木神社は、神社自体も以前は山頂にあり、疱瘡(天然痘)の神として知られていました。 慶長18(1613)年には山形城主が再建したとされ、これ以前から信仰があったことがわかります。現在の場所には昭和17(1942)年に移転したと言われているようです。


山形市滑川の姥神像


山形市滑川にも山中に姥神像が祀られ、これもその像容は月山不動と非常に似ています。若木神社と同じように、石工が同じと考えられます。


姥神像の特徴のひとつに、その顔の造形が一定でなく、多種多様であることがあげられます。このため、同じような造形の顔をした像は珍しいものと言えます。私見ではありますが、それぞれの石工が自分の癖などで造っていたのではないかと思っています。


滑川の姥神像は、まず川沿いを進み、枯れ沢をやや登った場所に何の目印もなくありますので、見つけるのが大変です。道もよくわからない状況のため、この像より奥までは確認しておらず、何の目的でここに祀られたかはよくわりません。



参考

西国三十三所観音巡礼につきましては下記のリンク記事をご覧ください。


ZIPANG-3 TOKIO 2020 ~令和元年日本遺産認定~「1300年つづく日本の終活の旅~西国三十三所観音巡礼~」



続く・・・



寄稿文

廣谷知行(ひろたに ともゆき)
姥神信仰研究家


 

協力(敬称略)

経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511 



※画像並びに図表等は著作権の問題から、ダウンロード等は必ず許可を必要と致します。   


ZIPANG-3 TOKIO 2020

2020年東京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。この機会に、世界の人々にあまり知られていない日本の精神文化と国土の美しさについて再発見へのお手伝いができればと思います。 風土、四季折々の自然、衣食住文化の美、神社仏閣、祭礼、伝統芸能、風習、匠の技の美、世界遺産、日本遺産、国宝等サイトを通じて平和な国、不思議な国、ZIPANG 日本への関心がより深かまるならば、私が密かに望むところです。

0コメント

  • 1000 / 1000